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メンバーコラム

“憧れさせない”ブランド

兎洞 武揚副代表

2015.02.23 Mon

自分の気持ちや心持ちまでが変わるような、ものや人やサービスに出会うことってありますよね。

ちょっと大げさかも知れないけれど、僕は、あるお寿司やさんの握るお寿司を頂いた時に、そのすばらしさに自分の人生や仕事の向き合い方まで考えこんじゃったことがあります。
なんか、美味しいお寿司を楽しみたかっただけなのに、自分と向かい合うことになっちゃって、気付いたら背筋まで伸びてたりして。困っちゃいましたけど。

そこまでのことでもなくても、この服着てる時の自分が一番しっくりくる、とか、あのお店の人との会話は自分にとって刺激的だ、とか、
あの気に入っている自転車に乗っているときは、いつもとはちょっと違う自分がいる、とか、あるモノやサービスに触れることで自分自身の気持ちが変わってくることは誰にでもあると思います。

少し堅苦しいブランドの教科書的な話をすると、こういうことは “情緒的な価値“ってことになるのだけれど、それは古典の教科書に任せるとして、僕はそうした概念とは別に、これからの成熟していく社会の中で、実はとっても大切な、ファクターがあると思っています。
それは、“依存しあう関係か否か?”っていう“関係性”の概念。

話は突然だけど、互いに相手無しでは考えられない!っていう羨ましいカップルがいたとして、そのカップルには実は2種類いて、周りから見てもお互い一緒にいることでなんか成長し合えてるというか、あいつらいいよねって見える二人と、どう考えてもひどい状況でさっさと別れた方がいいと見える二人っています。(いない?時々いるよね。)
後者は、「あの人ひどいんだけど、、私がいないとダメなのよ、、、」って、「おいおい!あなたがダメでしょう!」ってパターンですね。
この違いは、“互いに相手のいいところを引き出せる関係”か、“相手を依存させて離れなくさせる関係”かって違いなわけだけど、これって、「モノやサービス」と「人」との関係にもいえるんじゃないかって思うんです。

ちょっとはっきり言ってしまうと、多かれ少なかれ、経済成長期のマーケティングやブランディングって、“これを買えばあなたはこうなれますよっ”ていうアプローチでやってきたのだと思います。心理学用語を使えば、消費者が商品の側に投影を引き起こすようにして、購買行動を誘因してきたということになりますか。依存させてきたという面もあるかも知れない。
でもそれは、お金を払うことで消費者が投影しているものになれたような気になるというだけであって、本質的に自分は何も変わってない。
でも、その人のいいところを引き出すってことは、その人が自分でも気付いていないような自分に気付いてくことをサポートするということ。
これが商品やサービスにも出来るんじゃないか。
購入することによって自分ではない何か別のものになれた気になるということではなく、その商品やサービスに触れることで“自分の中にあるよさに自分自身で気付いていく”。本物のブランドはそこまで出来るじゃないかってそんなことを妄想しています。
商品の側に投影させるのではなく、“あなたの中に素晴らしさがあるのだ”と投影をお返ししてしまう。
それは高級品か普及品という違いではなくて、モノ作りと事業に対する志や誇りや挟持のようなものがあるかないかの違いなのだと思います。
設計思想やプロダクトや事業モデルや人作りがしっかりしたブランドに触れた時、人の気持ちにはポジティブな変化って起きているものですよね。

日本は100年で人口を3倍にしてきていますが、この間、ずいぶんと経済成長してきました。でも、これから成熟した社会に入っていきます。なんでも、2004年をピークにこれから100年かけて人口が大体1/3になっていくそうです。
こんな超成熟社会では、モノやサービスは憧れの対象や甘やかせて助けてくれる存在ではなく、自分自身を見つめ直すきっかけを与えてくれる存在の方が、大人な社会な感じでいいんじゃないかと
人って以外と自分のことや特にいいところなんて全然わかってなくって、それを知っていくことが大人になるってことだったり、成長することだと考えると、人とモノやサービスの関係にも、そういうことが持ち込まれると素敵だなと。

自分も、お仕事で、そんなブランド作りを目指していきたいなと思います。

ちょっとかっこつけ過ぎでしょうか。
いやいや、かっこつけることをもっともっと大胆に引き出して応援してくれそうなブランドがありましたらどなか教えてくださいませ♪

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