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メンバーコラム

失敗を活かすプランニング

宮井 弘之コンサルタント

2014.11.25 Tue

我々の重要な仕事の一つに「発見する」という行為があります。 生活者がまだ言語化していないニーズや気持ちを発見したり、 お客さんが課題だと認識していない問題点を発見したり。 「発見する」ための方法には当然ですがいろいろな技があります。 その中でシンプルでいつも使える視点をご紹介します。

実例を示します。以下は、ある食べ物の製品評価に関するキーワードを抽出したものです。 この言葉の羅列から、何かを発見してくださいと言われたら、あなたはどうしますか?

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「商品Aは甘い」「商品Bに比べて商品Aは酸味が足りない」「商品Aはなんとなく懐かしい味がする」 「商品Aは10キロカロリー」「商品Aのパッケージは派手な虹色」「商品AのCMで有名なあのソングは楽しい」 さて、数秒でいいので何か発見したことを口に出してみてください。

・・・・・・。

難しいですね。 私は、そんな時、以下の様な助け舟を出します。 「発見はいいのでとりあえず”分類”してみてください」 これなら行けるでしょうか?

例えば、「甘い」「酸味が足りない」「懐かしい味」・・・これは「味」の話しだな 「派手な虹色」「楽しいソング」・・・これは「商品A」のイメージの話しだな とりあえず発見っぽさはありませんが、何か前に進んだ気がします。 しかし、よく「発想法」の研修などに出て、「発見しましょう」のセッションでこういった分類をすると 怒られます。

「発見は、既存の要素の新しい組み合わせです。」 「キーワードを”分類”するのではなくて、”発見”したことを書いてください」

・・・・・・。

その発見が出来ないんですね。そのためのコツを知りたいわけです。 私は皆さんに「発見」を促したいとき、以下のようにワークを進めます。 「ひたすら分類してみてください。分類A、分類Bといろいろな分類をやりきったら、その分類を一度破壊して、異なるカテゴリーに分類された要素を無理やりくっつけて新しい分類をつくってください」

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例えば、こんなのはどうでしょうか? 「味」カテゴリーの「甘い」「酸味が足りない」と「イメージ」カテゴリーの「虹色」「楽しい」を 無理やりくっつけて、「子供が楽しめる商品」。 すこし、発見っぽさが出たでしょうか。

私が、このワークで皆さんに伝えたいことは、 「やってほしくないことがあれば、それを先にやってもらう」 ということです。

情報の羅列から、これまでに無い組み合わせを見つけて、そこに新しい意味付けや解釈を加える。 これが発見の1側面だと思います。 しかし、我々は過去の経験から、既存の組み合わせに、既存の意味付けや解釈を加えてしまいます。 発見をしてください。と言われてもそれがなんだかわからないので、分類をしてしまうのですね。 そこで分類ではなくて発見をしてくださいと言われても難しいので思考停止してしまうと思うのです。 散々熟考した挙句、結局分類をしてしまう。

そんな状況は避けたいものです。

であれば、最初からやってはいけない分類をひたすらしてしまって、既存の組み合わせを出しきってから、 それを壊すことに集中してもらうのです。 そうすれば、否が応でも既存の組み合わせで無いものが出てくる可能性が高まります。 私は、このような企画作業にかぎらず、「やってはいけないことを、先にやってしまう」ことの効用は 幅広く存在すると思っています。

拙書「二回以上、起業して成功している人のセオリー」では、起業に連続して成功している人の思考回路を探りましたが、成功する起業家はすべて 初期段階で積極的に失敗をしているという面白い特徴がありました。 人生においても企画においても、失敗は成功のマザーですね。 今後も私は、「失敗を活かすプランニング」を追求していきたいと思います。