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メンバーコラム

つくるとつかうがつながる古くて新しいマーケティングのかたち

岩嵜 博論コンサルタント

2015.03.2 Mon

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この写真、アメリカのサンフランシスコにあるエクスポラトリウムという科学博物館の写真です。手前にあるのは展示室ですが、奥にあるのはなんと展示品をつくるための巨大な工房です。

この博物館では、展示品の制作を外注することなく、全て内製しているのです。そのために必要な工房が占める面積は、展示室と同じくらいの広さ。さらに、その工房は展示室から丸見えになっています。

この博物館のポリシーは、展示物は自分たちで作ろうということ、そしてその過程も博物館の展示としてお客さんに見てもらうということです。いわば、つくる場と使う場の接近を敢えて意図しているわけです。

この背景には、まず以前にも増してものがつくりやすくなっているということがあります。工房の中には、熟練の操作が必要な機材もありますが、3Dプリンタのように、データがあれば誰が操作しても同じ出力を得られる類のツールも多く導入されています。

お客さん側からみても、その場で制作された展示品に特に違和感を感じているわけではなさそうです。むしろ、専門家が自らの手でつくった展示物には、リアリティとライブ感を感じることができます。お客さんにとって、つくる場と使う場がつながっていることが、今また新鮮な魅力として感じられているのではないかと思うのです。

モダンな社会において分業が進むとともに、つくると使うは分離される一方でした。しかし、このエクスポラトリウムに見られるように、ここにきてその近接性が逆に高まっているような気がしています。

モダンなマーケティングは、大量に生産されたモノが流通に登場してから初めて始まります。つくると使うが近接した世界では、こうした市場のあり方は大きく変わっていくでしょう。

作り始める前から作り手に声をかけて自分の思いを反映してもらったり、その課程で完成品を受け取る前から心理的なつながりが生まれたり、作り手も受けての意向に柔軟になったりと、生産者と顧客の新しい関係が生まれそうです。

つくるとつかうがつながることで、大量生産と大規模流通における大量消費の世界には見られなかったマーケティングやブランディングの新しい流儀が生まれつつあるのかも知れません。