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メンバーコラム

宇宙人と招待状

遠藤 礼奈アートディレクター

2015.03.16 Mon

「もうすぐ付き合い始めて一年だね♪」と
隣で寝ようとしている男に言ったら
眠たそうに「記念日とかそういうのいいよ」と返ってきた。

タイミングがまずかったのかもしれない
しかしそんないい加減な態度は許されない。
こうなったら祭りだ!宴だ!後悔させてやるぜ!
頭にきた私は、記念日に男との結婚式を執り行うことに決めた。

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さて、結婚式をすることになって
改めて良く出来ているなと思ったのは
結婚というイベントにまつわるデザイン計画だ。

イメージカラーはメインカラーが赤と白、
サブカラーが金、
イメージキャラクター(動物の部)は鶴亀、
イメージキャラクター(植物の部)は松竹梅、
イメージキャラクター(魚介類の部)は鯛、
何か漢字を使いたかったら「寿」、
日本髪を結うなら文金高島田、
式を行う建物は神社や寺、教会などの宗教施設、
もしくはそれ風のアレンジの建造物または部屋…

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そしてこれらを使用することにより
招待状やら引出物に付ける挨拶状やら、
親戚に送る事務的な告知物やら、
ありとあらゆるツールをデザインするのに
この上なく楽にそれっぽさが出せるし、老若男女に通じる。
郵便配達員は表に「結婚式招待状在中」と書いてるわけでもないのに
潮来の花嫁切手と手書きの毛筆の宛名と持った感じの手触りや重さで
封筒を手に取っただけで中身がなんだかわかっちゃうであろう。

それっぽさというのは乱暴に言えばブランドだ。

ルールも色々あるけれど理由がくっついててわかりやすい。
水引は紅白結び切りで10本とか、
切れる別れるがNGワードだったり句読点がNG記号だったり、
嫁ぎ先のお家の色に染まりますだの
ほどけないようにだの
ルールというのは由来や理由がセットだと覚えやすいし、守りやすい。
違反すると「縁起が悪い」というペナルティがあるので
大人はみんな、だいたい知っているし積極的にはルールを犯さない。
ほぼオートマチックに運用されているのだ。
ルールを作成してそれをどうすれば利用者が守ることができるか、
日々頭を悩ませている人ってたくさん居て、
そういう側からみればこれはすごいことだろう。

運用しやすさだって素晴らしい。
もしイメージカラーが蛍光ピンクとかだったら
目立つだろうけど印刷屋さんが対応していなかったり、
家庭用のプリンターで出力出来なかったりするだろう。
白い紙や赤い画材は簡単に手に入る。
C36M52Y41K8とかだったら色が転んで合わせるのが大変だ。

結婚にまつわるルールやら運用やらは
文化と紐づいているところが大きい。
我々日本人の文化は、
きっと日本人にしかわからないところだらけだろう。
それにもかかわらず、ツール類の放つお目出度いオーラは、
文化を解さない外国の方にも伝わってしまう気がする。

私は常日頃、宇宙人にも伝わるデザインをしたいと思っている。
デザインというのは言語を超えて感覚的に伝えることが出来るから。
たとえば腐っているモノのビジュアルや、毒キノコの色は本能的に危険だと感じる。
そんな本能に訴えるデザインが出来たらと思う。

宇宙人が結婚式の招待状を受け取ったとして伝わるだろうか?
金色や赤や紙の質感でただならぬ「縁起良さ」への祈りが伝わるだろうか?
伝わったとしても、正月と間違えられはしないだろうか?

そんなどうでもいいことを考えながら、郵便局へと急いだ。

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